平塚ホステス死体遺棄事件
事件概要

2014年11月5日早朝、神奈川県平塚市の相模川で、布団に包まれた遺体が浮かんでいるのを、通行人の男性が発見し110番通報した。
発見された遺体は20〜40代の女性とみられ、布団とこたつ布団に二重にくるまれ、その上からロープで縦横に複雑に巻かれ、中にはブロック状の石の塊が2つ入っていた。
右側頭部に目立つ傷があり、死後5〜10日経過しているとみられる。
衣服に乱れはなく、身元につながる所持品は無かった。
神奈川県警捜査一課によると遺体の身元は、神奈川県厚木市の専門学生 吉田綾奈さん(当時26歳)である事がわかった。

殺害後、遺体を遺棄された専門学生 吉田綾奈さん(当時26歳)

 

吉田さんは10月27日に横浜市にある母親宅を出てから行方不明となり、母親は31日に神奈川県警瀬谷署に届け出を出していた。
事件を知った吉田さんの友人からも情報提供があった。
2015年1月15日、神奈川県警平塚署捜査本部は、神奈川県大和市の建設作業員 神岡誠治(当時34歳)を死体遺棄容疑で逮捕した。
神岡は吉田さんの元交際相手であった。

犯人の建設作業員 神岡誠治(当時34歳)

 

2人は約2年前から同棲をしていたが、昨年夏に吉田さんが出て行き関係を解消していた。
その後の10月26日、吉田さんが神岡宅に服を取りに行き翌日未明にかけて、移動中の車の中で口論となり事件は起きてしまった。
口論の末に吉田さんが車を降りたところ、神岡が後ろから鈍器で殴打し殺害したと思われる。
遺体を運ぶのに使用した軽トラックの荷台には、吉田さんの血痕が付いており、遺体をくるんだ布団からは汗や毛髪が発見された。
神岡は吉田さんにストーカー行為を行っていた。

背景

・事件までの経緯
2人が出会ったのは、吉田さんが働くキャバクラでした。
吉田さんは昼間はエステ系の専門学校へ通い、夜は数店のキャバクラ店を掛け持ちし、生活費を稼いでいた。
2人は次第に交際するようになりましたが、神岡はその時すでに結婚して子供もいましたが別居状態であった。
2人は約2年前から同棲生活を始める。
しかし同棲を始めても、神岡が別居中の奥さんと離婚する素振りを見せないため、吉田さんは次第に神岡に対して不信感を持つようになる。
事件前の7月に平塚市で行われる夏祭りに2人で参加する。
しかし泥酔してしまった神岡は、吉田さんに暴力を振るい、吉田さんはそのまま同棲を解消し、同棲していたマンションを出て行く。
この際に吉田さんは、神奈川県警大和署に神岡の暴力について相談していた。
しかし未練が残った神岡は、執拗に吉田さんに付きまとい、関係の修復を願った。
吉田さんはこれに応じず、FacebookやTwitterなどで、神岡からストーカー行為を受けていると書き込んでいる。
この書き込みを知り、自分がストーカー扱いされているのを見た神岡は、ついに事件を起こしてしまう。
10月26日夜、同棲していた部屋に衣服などの私物を取りに来た吉田さんを送る最中、車内で激しい口論になる。
口論になったきっかけは、吉田さんが利用している、無料通信アプリ”LINE”のプロフィール画像を、新しく出来た交際相手との画像に変えていたことをめぐってだった。
神岡は事件の30分前友人にLINEで、「見かけたら教えて、殺すから」と殺害を示唆する書き込みを行っていた。
その口論は日付をまたぐまで続き、ついに耐えかねた吉田さんは車を降りる。
車から降りた吉田さんを神岡が、車内にあった鈍器で吉田さんの後頭部を殴り殺害する。
殺害後、仕事で使用していた軽トラックの荷台に、吉田さんの遺体を載せ相模川へ遺体を遺棄する。

吉田さんの遺体が発見された平塚市の相模川

 

 

・加害者の行った偽装工作
事件発覚後、神岡は捜査陣に疑惑の人物としてマークされていたが、捜査の目を欺くため偽装工作を図っていた。
神岡は遺体発見の翌日、テレビ番組のインタビューに答えるほと余裕を見せていた。
その後、複数のメディアに元交際相手として登場し、「俺は絶対にやってない。」と言い張った。
更に神岡は「吉田さんに会ったのは前日の26日で、朝から夜まで一緒にいて、家まで送って別れた。」
「犯人が早く出てきて欲しい。」
「テレビだと自分が最後に会ったってなってて、疑われてもしょうがないと思ってますけど、自分はやってないので、絶対に。」と語った。
更に神岡は、交流サイトFacebookを使い、
「彼女と連絡が取れなくなって困ってます。誰か情報があったら教えてください。」と書き込んでいた。

 

 

 

▪裁判
2016年3月25日、神奈川県横浜地裁は殺人、死体遺棄の罪に問われた神岡に、懲役18年(求刑20年)の判決を言い渡した。
神岡は殺意を否認し、弁護側は「被害者が先に手を出してきているので、正当防衛が成立する。」として、殺人罪に関しては無罪を主張していた。
裁判長は、被害者の頭の傷の状況から「少なくとも頭を5回殴り、そのうち2回は頭を固定した状態だった。人が確実に死亡する行為で、一方的かつ執拗な攻撃だったと推認される。」とし、弁護側の主張を退けた。